熊野関係古籍     熊野古道

吉   記  

 

 権大納言が藤原経房の日記である。経房は承安四年(1174)9月、熊野詣でをしている。題名は経房の別邸が京吉田にあったことから、後に付けられたもの

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   *ここに記したのは「中辺路町史」より熊野参詣に関した箇所を転載したものである。

  吉                                   

○十四日馬一匹・熊野先達慈修房のもとへ送る

○十五日先達慈修房は阿闍梨定宗なり、年七十九、多く徳行を積む。その指南はもっとも頼むに足りる。近代彼をもって先達の棟梁なすの故なり。細馬一匹、甲冑色革撞樺等、熊野別当湛増の許に送る。近日京に出てくる故なり。本宮の師なり。

○十九日帰路先達慈修房の中山房、権現参詣のために参いる。

○二十六日、高家に着き宿す。志賀庄上座盛院より細々した料を送らる。新宮の師夜に入って来訪され対面す。

○二十七日・切目王子において、一切経の内六行を書き奉る。五人の勧めによるなり。

○二十八日・田辺に着き湛増法眼房に宿す。

○二十九日、滝尻湯屋に着く、権別当(湛増)より細々の料を送られる。今日下向山伏多し、食糧尽の由で、毎度毎人にこれを施し与える。進発以後所々より上人加わり奉り、或は食を与える山伏は多く記するに遑あらす



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